■ コラム一覧 ■ ホームへ ■


いつか再び翼を広げて -茜色に沈んだ夕焼けの中で(2)-
 
 ようやく挙げた1勝に浮かれる間もなく、そこからのサンガは連敗地獄を味わう事になった。。。
常に試合内容は決して劣ること等なかった。相手より上回っている事もあった。
一つ挙げるとすれば自分達のリズムで試合を運びながら、その時間帯に得点を挙げられる
決定力が明らかに他のチームより劣っていたという事だろう。
 先制していてもそれらを守り切れる集中力のなさも目立っていた。
一瞬のミスから失点をすると、ズルズルと崩れる事がサンガは見受けられていた。。。
そして、セットプレーからの失点の多さ。何度も言われていたシーズン中の失点のほとんどが
セットプレーからの失点だった。
確かに、怪我人の多さにより選手を固定できなかったのも不振の要因もあったと思う。
獲得したブラジル人選手が助っ人としては物足りずにへジス、エジーニョバイアーノが負傷の為に
戦線を早くから離脱したこと。
若干18歳のファブリッシオでさえ、1試合起用されたが、戦力とはとてもではないが言い切れなかった事。
 監督である加茂監督もチームの戦術の固定や選手起用に疑問符がつくような事がしばしば見られた。
特に、疑問がついたのがようやく挙げた1勝目のガンバ大阪戦だった。
熱田の得点でリードしていた後半。加茂監督は早々に熱田を交代させる行動に出てしまった。
それに怒った熱田はピッチから出るとつけていた手袋を投げ出す場面が見られた。
それが監督には気に食わなかったのか次節の広島戦では起用せずに、ファブリッシオを先発に起用した。
「とてもではないが何であんな選手を使うのか監督の考えがわからなかった」
と選手が言うように監督の起用方法なども疑問符がつくことが多かった。
柏レイソル戦でさえ、先制していたにもかかわらず「熱田が効いていた・・・
彼が下がらなかったら負けていた」と言わしめる程、サンガにとってはキープレーヤーは熱田であった。

 「熱田ですよ・・・絶対に・・・」
「うん。そう思う。熱田が絶対にキーマンだと思うよ。」
友人と話していた中でサンガはそれまでに早くもファーストステージは1勝10敗という成績だった。
ガンバ戦のあと、9連敗をしていた。何度も連敗は経験していたが今年までもその連敗を経験するとは
思っても見なかった。
どうしても勝てるという雰囲気がその時のサンガには伝わらなかった。
 ただ1人カズが得点を挙げていてもサンガは持ち堪える事が出来ずにいた。
友人と話していた熱田をなかなか起用しない監督にも私は信じられない気持ちで一杯だった
カズにボールがまわらないのが多かったのも、中盤での構成力に物足りなさを感じていた。
ゲームを作る選手がいなかった。少なくとも熱田にはゲームを作る能力はなくてもある程度
リズムを作る事は可能だと思っていた。

そういう試合を観ていて、持ち堪えない弱さを露呈しているサンガにどうしても
今回の連敗が普通の連敗とは言い切れない
最悪の結果に前進しているような気がしてならなかった。。。。

「だめだ・・・勝てないね。。。今のサンガ・・・選手にも怪我人が多いわ。。。」(友人)
「でも次節は大丈夫ですよ!!何と言っても神戸ですよ!!
 神戸!!しかも西京極で対戦ですよ!!」(私)

99年セカンドステージに加入したカズのデビュー戦は西京極での神戸との試合だった。
その試合で2得点を決めて強烈なデビュー戦を飾ったカズの事を話の中に取り入れて
次回での縁起の良さを友人に語った。
それにカズ自身、Jリーグ通算100ゴールにリーチが掛かっていた試合でもあった。
はたして得点を決められるか。。。それとも連敗を記録するのか・・・?
という事も思わせながらサンガは神戸を西京極で迎えた。
確かに、昨年神戸との一戦でカズの2得点もありサンガは3-1で勝つことが出来た。
確かに相性は良いかも知れない。しかし、いまだに2勝目を挙げられないサンガに内心ではあったが
このままファーストステージは1勝のみで終わるんじゃないか?という怖さ、予感さえ持っていた。。。
 常に不安と一緒だった。。。。
そして、この日の西京極は異様なほどピリピリしていた。。。。
誰一人サポーターから声援が聞こえない。西京極に響き渡る大きな声援は今日ばかりは聞こえなっかた。
さすがにサポータ自身今のサンガに満足していなかったはずだし、誰一人まさかサンガがここまでに
成績自体が落ち込み、最下位という状態など信じていなかっただろう。
私でさえ、まさか96年以来の最下位であるとは思いもよらなっかた。。。
 屈辱的な成績だった。。。カズ、遠藤といった選手がいても。。。。個人個人の選手の能力で
勝てるほど甘くはないだろうが、期待していたのも、また事実だった。
この日も前半早々と失点をする。
前半、佐藤尽による得点で同点に追いつくとそのまま折り返し、後半にまたしても勝ち越されてしまった。
「またかよ・・・」

 だがしかし、この日は決してそのまま負けてしまうような雰囲気ではなかった。西京極が異様な
ほど静まり返り神戸サポーターの声援が聞こえるだけの中での雰囲気に少しずつではあるがサンガは
粘るんではないかと思う雰囲気がどこかであったのかもしれない。
その中だった。57分、中央突破した野口からがドリブルで駆け込むと、左サイドに走りこんでいた
カズに、そのままシュートを放たずにパスをする。カズはそのままダイレクトに鮮やかに蹴り込み、
2-2と同点に追いついた。
それが決まった瞬間に静まり返っていた西京極が沸きあがった。
そして、カズ自身も何年ぶりかの<カズダンス>を披露した。
そして、ついに一つの勲章が付いた。
カズ自身のJリーグ通算100ゴール。誰もが待ち望んでいた100ゴール。
声援にこたえるかのようにカズは自らのプライドと
チームのふがいない成績に責任感を感じながら最高のパフォーマンスを披露し、
再び同点に追いつかれながらも延長直前にも決勝ゴールを決めて連敗を止めた。
「記録より記憶に残ればいい。。。」そう言ったカズは静かに自身の記念のゴールを振り返った。
決して笑顔を見せずにチームメイとを勇気付けていた。
33歳になっても衰える事のない努力と闘争心。そして人一倍の練習量。
常にスタメンに名を連ね、サンガを勝たせるために必死になってピッチを走り回った。

ようやく迎えた2勝目は最高の形で、最高のパフォーマンスで挙げる事が出来た記念でもあった。
「やっったよ!!サンガ勝ったよ!!お願いがあるんだけどビデオ入れといて!!
カズが決めたんだよ!!100ゴール達成だよ」
帰り際に家に電話を入れた私は女房に伝えた。
浮かれながら家に帰った私は、記念の試合をもう一度見た。
そして、翌日の新聞の記事も切り抜き、現在も残している。
「良かったね。カズが決めて・・・」
女房がそう言って祝福してくれた。
「コレでサンガも上昇気流に乗って連勝してくれたらいいけどね。
でもまだまだ2勝だから。厳しいのは変らないね」

いつしか囁かれていた加茂監督更迭の噂が流れ出した中で私はいまだに厳しい状況の
サンガに不安を抱いていた。。。
 そしてファーストステージは神戸戦で挙げた2勝目から再び連敗に陥った。。。。
「ぜったいどこかで選手の中にはまた今年も残留できるんじゃない?って気持ちがあると思う。」
わたしが友人に言った言葉に「かもしれない・・・・」と呟いた。。。

それから間もなくファーストステージは終了し、2勝12敗1引き分けという結果で締めくくった。

「加茂監督にはこのまま監督を続けて欲しい。。。簡単に辞めさす事はできる、
でも今回は辞めるような事はサンガにはして欲しくない。それではいつもと一緒。
だからがんばって下さい。加茂監督。
チームの成績は確かに満足できるもんじゃないし、納得はしてない。でもセカンドステージは
怪我の選手も戻ってくるし建て直しは効くと思う。」
そういう内容のメールをKBS京都のサンガのサイトに書き込んで送るとサンガ応援番組内で読まれた。
「私もそう思います。加茂監督にはがんばってセカンドステージで巻き返して欲しいです。」
リポーターの女性がコメントしていたのを記憶している。
カズがハッサン2世杯で代表に呼ばれた数日後にスポーツニュースから飛び込んできたニュースに
驚きを隠せなかった・・・。

「サンガ、加茂監督を解任。後任は現在コーチを務めている
エンゲルス氏が監督を務める事になりました。」

(3)へ続く。

■ ページトップ ■ コラム一覧 ■ ホームへ ■


inserted by FC2 system