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いつか再び翼を広げて -茜色に沈んだ夕焼けの中で(4)-

 負けるわけにはいかない。。。それがサンガのセカンドステージだった。
セカンドステージ開幕戦でのジェフ市原との対戦に3-2と勝利したサンガは幸先良いスタートを切った。
 「昨年同様、開幕戦を勝ったことは大きいですね!」
サンガを応援している仲間と話した言葉に昨年の開幕3連勝を思い出させた。
確かに、監督を交代させる事はショック療法ともなるし、チームを大きく変えるきっかけにもなる。
しかし、時には流れを変えられずにさらに悪化する事も考えられる。。。。
まさに諸刃の剣。。。サンガには大きな賭けだったに違いない。
 韓国から獲得した朴という戦力もまた、大きな変化を感じさせる予感さえ持っていた。
ボールキープといい、中盤での駒不足を補う意味ではその存在は際立っていた。。。
「これで、サンガも上昇気流に乗ればいいけど・・・・」
 「カズさんががんばっているのに自分たちが、がんばらなくてどうするんだ」
勝利インタビューに答える熱田の言葉に、やはり「もしかすれば、変るかもしれない。」
と思う自分に、このままの流れを持続できれば、残るかも知れないと思った。

 2節、3節と2連敗を喫していたサンガは、続くアビスパ戦では一度は勝ち越したものの、
後半残り7分で追いつかれ、延長にもつれこみながらもカズのVゴールで勝利した。
苦しみながらも嫌な展開で勝利をもぎ取った粘りも見られるようになっていた事に、
徐々にではあるが、確実に、変りつつある姿も
見られるようになっていた。
明らかにファーストステージとは違う姿をサンガはみせ始めていた。
さらに、ファーストステージでは怪我に泣いていた選手もようやく復帰し、
チーム状態は上向きに向かっているようだった。
ブラジル人のへジスもエジーニョもチームになじんできているようだった。
ファーストステージではVゴールで負けていたものが逆にVゴール勝ちが出来るようになってきた。
精神的には確かに追い詰められた状態ではあったろうが、1人、1人の選手の責任感の強さが
現れてきていたことは状態をよくしている事の証でもあったと思う。
それでもリードしていても追いつかれる所はまだまだなところもあったし、
危惧されていた失点は開幕さたセカンドステージでの
序盤でも改善されていなかった。。。。
 
 入れ替えた事は何も監督だけではなかった、確かに、負傷がちで、
ファーストステージ活躍さえできなかったへジス、エジーニョ松川など、戻ってきた選手はいたが、
それまで活躍していた選手までを入れ替えた。
 それはGK松永の欠場。セカンドステージから、GKは平井へと変っていた。
ある程度の活性化を狙っての事だろうか、負けこんでいた部分を払拭させるには選手の
入れ替えもある程度見られる事では
あるけれど、欠場している松永の存在がピッチにいない事がやけに寂しさを募らせる。
若手への切り替え。
 確かに、サンガにとって課題でもあったのが若手の起用。そして、育てる事。
勝利を急ぐあまり、補強選手に依存していたところは他のクラブと比べて大きな問題点だった。
エンゲルスが若手の育成に定評があったのは言うまでもない。だがしかし、果たして、
今回の松永から平井への切り替えは
危ぶまれる残留にプラスとなりうるかも疑問だった。ベテラン選手を使う事は、
危機に瀕しているチームには必要な部分だと感じていたのだが
結局、松永はファーストステージを最後にピッチに顔を出す事はなかった。
「危ない時こそ、ベテランの経験は絶対プラスになるはずなのにね。。。」
応援仲間が言った言葉に、必死になって守っている平井の姿を見ながら、
この選択は本当に良かったのかな・・・と思っていた。
確かに平井はよく守っていた。ただ一つ、足りないのがあるとすれば、それは声だったと思う。
後ろからの指示の声のかけ方が足りない気がしていた。
GKは神の声と言われる。後ろからのチーム全体を鼓舞させる声。時には激しく、時には優しく。
どこかそれが足りないような気がしていた。。。消極的過ぎるというか。。。。
でもプレーはさすがに上手いなと言わせるファインセーブも見せていたし、今後に期待が持てた。
もっと延びる素質は持っている。
松永の長年守ってきた姿が見れなくなった寂しさもあったのかも知れないけれど、
でも松永のプレーを見たかった。。。
 セカンドステージは5節を終えた。その時点での成績は2勝3敗。総合成績では15位。
降格のラインにいるサンガはついに、新たなる補強を行なう事になった。
それは、突然の出来事だった。
サンガは朴以外の選手の補強を敢行する。名古屋から2人の代表選手を獲得した。
平野孝、望月重良。
正直彼らの加入は驚きを隠せなかった。そして、急な出来事だった。
「サンガが早く欲しいって名古屋に駆け寄ったそうですよ」
応援仲間の言葉に驚く私。
1ヶ月前に突然名古屋を解雇された3人。平野、望月、大岩。
これはサッカーニュースでは衝撃だった。一部の報道では色々監督と折り合いがつかないだの、
空気を乱すといわれた3人に、驚きを隠せなかった事を覚えている。
その中の2人がサンガにやってきた。大岩も一緒に獲得するんじゃないかと思ったが、
中盤の組み立てが弱い部分を補う形で平野、望月を獲得したんだなと思った。
「簡単に、立て直せるだろうか?2人が加入するだけで簡単に変るものじゃないと思う」
だけども、2人の加入によって大いなる力を手に入れたんではないかとも思った。
中盤に2人が入ればカズは確実に今以上に生かせる。得点シーンも増える。
もちろん、朴の負担も、へジスのFWでありながらも中盤に下がる癖、
ボールを持ちすぎる癖も治るんではないかと思った。
彼ら2人の加入が、中盤を上手く構成し、攻撃の幅が広がる事も、サイドからの攻撃も
増えるはずだと信じてやまなかった。
シジクレイの抜けた穴もこれで、埋まるのではないだろうかとも考えた。

彼らのサンガでビュー戦は7節、西京極での川崎フロンターレ戦と決まっていた。
フロンターレとは降格を争う相手であり、簡単には負けられない。お互いそれは同じ気持ちだろう。
負ければそれだけ降格により近くなる事に、お互い意地とプライドがぶつかり合う。
西京極には、報道記者も数多くいた。平野、望月のデビュー戦を期待してのことであり、
現に彼らは日本代表の選手。
それが、今、降格の瀬戸際にいたサンガに加入した事への話題にも注目されていた事も
含まれていたのだろう。
 ただ、彼らはスタメンではなくサブとして登録されていた。いつ、交代されるか。。。
それが気になった。試合が動いたのは前半19分、フロンターレの向島の先制点だった。
早くも先制され、1点のビハインドを背負う格好となったサンガは前半終了後、
先発の熱田、佐藤一樹を交代させる。ついに彼らはピッチに現れた。スタンドからはざわめきと、
声援がこだまする。
そして、スタジアムから2人の名前が放送されると一斉にコールが沸き起こった。
先制されている中でピッチに入る事はかなり重圧だった事だろう。
しかも、試合から離れているのだからゲーム勘も取り戻せるか心配だった。
 だが、彼らのプレーはそれを感じさせる事はなかった。そして、私自身が見たサンガは、
嘘のように動きが活発になった。前半押されていたのが嘘のように、そして、どこかぎこちない
動きを見せていたサンガがこうも簡単に変るのか?と疑いたくなるように流れる攻撃を見せていた。
信じられない光景を目のあたりにして、体が震えた。フロンターレが防戦一方になってる。
彼らが怖いのか、引き気味になっている。サンガのサイドからの攻撃が効果をあらわし始めた。
平野のサイド突破。望月の後ろからのDFも時折見せるフロンターレの攻撃を寸断している。
 へジスの動きも生き生きしている。
さらにカズも2人の加入でボールが廻るようになった。
59分にへジスが同点に追いつくと、平野のスルーパスから再びへジスが決め、
さらに、へジスと平野が左に展開して上げた
センタリングがオウンゴールを誘って、3-1でサンガは見事な逆転勝ちを収めた。

これが日本代表の力か。。。。!!と唸るような攻撃を見せたサンガ。
2人の加入によって中盤での厚みが増して、今までのサンガが嘘のように、見違える攻撃を発揮した。
そして、久々の試合に出場した平野、望月のサッカーに対する喜びを爆発させていた。
「サッカーが好きでたまらない。サッカーをできる喜びを噛締めている!」
プレーの中に、彼らの姿勢が感じられ、もう、こっちまで楽しくなってしまった。
それだけ、彼らの加入が心強くあり、上昇のきっかけになると信じてやまなかった。
ただ、今日は、久々の試合で喜びを噛締めながらプレーしていた、1試合だけだから、何ともいえないけど、
下手をすればサンガのリズムに慣れていって、今日のようなプレーも陰をひそめるんではないかとも感じた。
2つの思いが交差する中、サンガは新たな力を手に入れた。
 効果がこのまま続けば良いが・・・・。と危惧する自分もまた、そこにいた。
付け焼刃的なもので終わってしまっては意味がないんだから。。。
かくして、サンガのセカンドステージは中盤戦を迎えていた。
サンガはこの時点でいまだに総合15位のままだった。
降格の危険性はいまだ消えずにいるが、総合14位のジェフに一歩近ついていこうとしていた。
ジェフの背中は見えてきてる。
残りの試合でなんとか2人の効果で奮起してくれたら良いが・・・・。
と、祈るような想いで酔いしれる西京極を後にした。

(5)へと続く。

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