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いつか再び翼を広げて -茜色に沈んだ夕焼けの中で(6)-

 もう日も暮れかけていた。。。車の中でサンガの試合の経過を携帯電話のインターネットで調べた。
ジュビロ磐田 0-2 京都サンガと表示された画面を見て「サンガ勝ってるヤン!
誰が得点決めたんや?カズか!?ヨッシャー!」
家族で出かけた買物帰りの中での車の中での出来事だった。
サンガはJ1残留を賭けた終盤の試合をジュビロ磐田スタジアムで迎えていた。
家路に着くとテレビのスイッチを入れてBS1を見る。サンガの中継は夜中でしかやらない事は
わかっていた。
だが、途中経過しかわからなくてもどうなっているのか知りたい気持ちがあった。
中継は市原-福岡との対戦だった。市原もまたJ2降格の瀬戸際に入る。負ければ結果次第で
J2降格の立場になる。
試合は白熱していた。それまで一度も応援なんてしていなかった福岡を応援していた。
「頼むで!福岡!勝ってくれ!」他力本願な、身勝手な気持ちがあるのを知りながら必死になって
応援している。
そのとき途中経過の知らせが入った。サンガがジュビロに1点を返されて、2-1となっていた。
「げ!1点差やんか!」福岡のゴールネットを揺らすボールが入った。
市原がリードされていた福岡に追いついた。
そして再び途中経過が入る。
実況アナウンサーが「磐田-京都、磐田が同点に追いつきました。これで同点です。
京都は市原の結果次第でJ2降格または残留の立場になります。」
それまで、まだ余裕があるに決まっていると思い込んでいた自分にその言葉を聞いたとき、
一瞬ながら表情が変るのが
自分でもわかった。
 市原は同点に追いついた事で流れが傾いていた。ロスタイムに入った試合は延長に持ち込まれる
状態になりかけていた。
「京都!とうとう逆転されました!これで2-3です!」
その瞬間。。。背筋が凍りついた。頭の中が真っ白になった。
そして市原は延長で福岡に競り勝った。。。。試合は終わった。喜ぶ市原。
京都が負けて、市原が勝ち下記のような形となった。

14位 市原 8勝2分け17敗 得失点差-10 
15位 京都 6勝4分け19敗 得失点差-27 

上記の数字のように得失点差が17も開いている事を知ったとき、
初めてサンガはJ1残留が厳しくなったことを悟った。。。。
身動きできなかった。。。日は沈みかけていた。。。もう季節は冬を迎えようとしていた。
薄暗くなりかけていた夜空を見上げながら
「どうしてこうなったんだ。。。」
とうつろな顔をしながらタバコを吹かしていた。
負けた時はいつもそうだった。。。。特にアウェーでの試合でテレビがタイムリーで
見れないときはその儀式(?)のような
ことを何度もしていた。でも今回のそれはいつものような光景ではなかった。夜空に向かって初めて
サンガがもはやどうにもならない状況に陥ったことを理解した。
ただ思うことはどうして3点も簡単に得点を許したんだ・・・と理解しがたい感情に揺さぶられた。
 
 夜に流れたハイライトでサンガの試合を観た。
「ああ。。。今年のサンガを象徴する試合だな。。。」と頷くしかなかった。
開始1分でサンガはへジスのゴールで先制すると前29分にはカズがPKを決めて2-0でリードしていた。
だが、前半試合のペースを奪いながら後半になって別チームのように鈍い動きから磐田に猛攻を浴びて
残り15分一気に同点、そしてロスタイムで逆転された。うなだれるイレブン。。。
 勝てる試合を持ちこたえる事が出来ない典型的な今年の負けパターン。
いつものサポーターへ挨拶する選手のうつむいたままの姿。
だがテレビに映った彼らの表情には負けて降格が決定的になったことに対しての
感情を読み取る事ができなかった。
それを認めたくないのか、まだはっきり決まったわけではないとでも言っているのか。。。
完全に分からなかった。
その日、一足早く総合16位の川崎フロンターレのJ2降格が決まった。

 その日夢を見た。今でも覚えている。サンガが負けてJ2降格を迎えた瞬間に
自分がその場にいた夢。
駄目なのか!?終わりなのか!?スタジアムで叫んでいる自分がいる夢を見た。
その瞬間目が覚めた・・・。
心にポッカリ穴があいたような目覚めの悪い朝を迎えた。
そのとき、
「ああ、そうだったのか。。。サンガは昨日負けたんだ。
J2が確実になったんだな・・・。」
認めたくない気持ち、認めなければならない気持ち。サンガはこれからどうなるのだろう
という不安が入り乱れる。
珍しく、各スポーツ新聞を購入した。そこに書かれてあったのは
「サンガJ2降格決定」、「カズ京都退団!」、「J1残留絶望」、
「主力選手大量退団確実、カズ移籍決定的」
どれもマイナス的な見出しばかり。正直頭にきた。
完全にどの選手も移籍をする事ばかりが書かれた内容。
特にカズについては完全に移籍することを肯定的に書かれてまだ決まっていない憶測記事ばかりを
書いて来期が決まっていない、シーズンは終了していないのに決まったかのような描き方だった。
 怒りの感情、悔しい思い。どうして簡単にそういう事を書くのか!という
腹立たしい気持ちで一杯になった。
この日、J2リーグ最終戦。浦和-鳥栖の試合が中継され、いまだ落ち着かない気持ちでテレビを見た。
まともに見るJ2の試合。J2なんて夢のまた夢、サンガには無縁だと思っていたJ2。
鳥栖の守りに苦しんで、てこずっている浦和の試合を見て、少しながらJ2での戦いを
垣間見る事ができた。結果的にその試合は浦和が延長で鳥栖に勝った。
J1復帰を果たした事を喜び合う選手がピッチで抱き合っていた。
観客からものすごい歓声がこだまする。
その光景をブラウン管で見ていた時、目から涙が溢れた。。。気がつけば自分は泣いていた。
1人で泣いた。J1昇格を決めた浦和におめでとうと言う気持ちと共に、
サンガが来期その場に移す事への不安と、これほどまでも苦しい試合になるのかという気持ち。
悔しさと、悲しみで、これほどまでの屈辱と・・・。
初めて感じた思いに自然と流れでた涙にただ、うつむきながら大泣きをしていた。。。
開幕前のあの日の出来事。キーホルダーが外れて嫌な予感を抱いたあの時の出来事が
現実になった時、サッカーとは何て怖いのだろうと恐ろしいと初めて思った。。。
 数日間は何も考えられる余裕がなかった。大好きなサッカーさえも見る気が失せていた。
自分がしているサッカーさえもやる気が失せていた。。。
ある日見たサンガ関係のサイトで来期のことや、降格っていう見出しの内容を読んだとき、
だが考えてみればとふと考えた。例え、厳しくなった数字とはいえ、
まだ最終的な決定なことではないと。
得失点差が17であるとは言え、まだわずかに可能性が残されているかも知れない、
市原と勝ち点を並ばせばいいのだ。周りは「京都あかんね。。。もうあかんヤン。。。」
「来期はどうなる」なんて雑音を聞くたびに自然と怒りを覚えた瞬間。
その瞬間自分にある思いが生まれた。リーグはまだ終わっていない。
終わるまで最後まで諦めずに戦うんだと。
Never give up J1!! 諦めるな!最後まで戦え! その思いが自分をまた奮い立たせた。
そして、ホーム最終戦の西京極へ足を運んだ。 ヴェルディ川崎戦との戦いを見るために。
もうどうでもいい。最後まで諦めず、残りの試合を見届けようと思った。

(7)へと続く。

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