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いつか再び翼を広げて -茜色に沈んだ夕焼けの中で(最終章)-

 「わかんないよ。。。サンガ・・・。どうするの?サンガ来年どうするの?」
混乱ばかりが頭に残るばかりで、気持ちに冷静さを取り戻すにはどうやら時間が
掛かりそうだった。
降格のショック以上に、尊敬してやまない敬愛していたカズの京都退団はメディアにも
衝撃を与え、サンガのフロントの不味さだけが大きく取り扱われていた。
「本当に応援を辞めるの?今更何処を応援するんですか?簡単には他へ行く事なんて
出来ないでしょう?」
仲間に言われた言葉にただ「もう応援できない。。。」と答えるばかり。
「カズ退団は信じられないですよ。。。。でも。。。ある程度考えての行動でしょう?」
仲間に言われても無言を通すだけだった。。。
だがそれだけが、カズ退団だけが理由ではないけど、
一つの思いがそれを起こさせていたのは言うまでもなかった。

-数ヶ月前
「君、営業部から外れてくれないか?現場へ移って欲しい。それが出来ないんなら退職という
形をとって欲しいと思っている。」
勤めていた会社から言われたその言葉は事実上の解雇宣言だった。

 会社側に言われて納得できない応対に憤りを感じていた。
一方的な要求に怒りを押さえる事が出来ず、理由なき言葉にただ悔しさだけが募った。
それから私は答えを出さず、完全に解雇させるならしてみろという気持ちで
その後も営業を続けた。
だが気に食わない会社側はあらゆる手で辞職させようとしてきた。
いわゆる虐め見たいなもの。

 結局、数ヵ月後、私は会社に対して辞職を出して辞めた。それからはまさに
転職活動の日々だった。
中には自分の転職活動を失笑する企業もあったし、
「そんなに勤めたいんならどうぞ?うちはいくらでも社員はいるし」
っていうこともあった。とにかく転職先は見つからない。。。
自分の中で納得できるまで探そうと考えていたけど
思うように行かない活動に苛立ちがあった。
長期戦もありうる。。。。何がいけないんだろう。自分の生活に一種の危機感があった。
その日も転職活動に失笑する企業の面接で結構自分の中で悔しさが込み上げて幸いにも
城陽の近くだったのでサンガの練習があるんではないだろうか?と考えて立ち寄った。
J2降格の瀬戸際の最中のサンガの練習に選手たちは必死になってトレーニングに励んでいた。
カズが先頭にたってランニングをしている。その光景を見ていて、
「ああ・・・もっとがんばればよかったな・・・。
今頃、こんな自分を現実に受け止める事があるならもっとやればよかった。。。
甘いな。。。俺も舐めていた部分もあったんだよ。。。」
と振り返った。カズのその姿勢、練習でも手を抜かないその姿を改めて目の前に受け止めた時、
気持ちは吹っ切れた。
励まされた気持ちで一杯だった。
そして、幸いに自分を受け入れてくれる企業は見つかった。

 常に自分の中では、カズがあった。どんなに苦しくてもカズのゴールによって何度も救われ、
励まされ、勇気付けられたことが自分にはあった。
サンガに来た時には言葉に表せないくらいの歓喜を見せ、何度も夢なのかと考えたくらい
カズの入団が衝撃だった。サンガのユニホームに袖を通した姿。
西京極のピッチに立ったカズが、敵ではなく、応援しているチームの一員である事に
何度も誇りに感じた。
それが解雇・・・。余りにも突然の出来事。
解雇ならそれなりに理由もあるだろう。理由が見当たらないだけにそのことが許せなかった。
どうしても納得できない。自分の解雇と重ねながら、怒りに震えた。
解雇された自分の思いがそれを起こさせた。。。サンガを応援する気持ちが失せた。
カズを解雇させた理由以上にフロントの人的非道なやり方が気にくわなかった。
「とりあえず、天皇杯まではサンガを応援します。それが応援する者の最後の務めだし
最後まで見届けます。
だけど、カズが行く移籍先の応援をするというわけでないし、
サンガ応援しなくてもサッカーは好きだから見る。」

天皇杯3回戦札幌との1戦の西京極へ行く途中、その荷物の中にプラカードを持っていた。
カズへのメッセージを書いたプラカード。
それを見せて、少しでもカズへのメッセージを伝えたかった。
すでにカズは退団することは決まっていたけど、でもどうしてもカズに京都に残って欲しい
気持ちがまだあった。
しつこいかも知れないのは分かっていてもどうしても自分にはやりきれない思いがあった。
メインスタンドに向かってくるカズにそのプラカードを見せたとき、軽く会釈をしてくれてた。
見てくれたことに感謝しながら「決勝まで行きましょう!カズさん!!」
試合は札幌に0-1と敗れた。西京極で最後の試合を終えたサンガ・・・。
 カズのサンガでの勇姿はそれが最後となった。サポーター席に投げ出されたユニホームは
サンガと決別する意味がこめられていただろう。。。カズと叫ばれる多くの声援が
西京極に木霊して、フロントを批判するサポーターが多くいた。
試合途中、審判に意見する選手の姿、目的をうしなった選手のプレー振り。
気が付けば自分は必死になって「次の試合の事も考えろ!!あんまり抗議するな!」
サンガを以前のように応援していた。負けた時、今までの時と同じように悔しがった。。。
「このまま終われないよな。やはり、終われないよ。見捨てられないな。。。」
芽生えた感情。甦った情熱。
「俺・・・サンガ応援しますよ。やっぱり、辞められないのが分かった。
どうなるか分からないけどJ2でもサンガを
応援する事にします。今日試合観ていて、分かりました。やはり、サンガ

必ずや再び大空へ翼を放つ日が来ると思いながら今は、J2の舞台の厳しさを想像しながら
時が来るのを、開幕するのを待つしかなかった。
・・・・
 2001年11月10日(土)J2リーグ第43節、湘南ベルマーレ戦。
ついにサンガはJ1復帰を決めた。
1年という長期のリーグ戦。44節という試合の多さ。主力と呼ばれた選手が去り、
若手主体のチーム編成。
ゼロからのチームつくりだったけど、エンゲルス監督の元、昨年から残留した選手と、
新たに獲得した選手との融合で、サンガは常に上位に顔を出していた。
負けてる試合もあっても連敗は1度だけだった。
サンガは常に安定していた。そして、またサンガが生まれ変わったのを感じていた。
「あの日感じたことは、嘘ではなかったな。。。。」
 
自身初めて見たJ2リーグ第2節。新潟戦。
西京極陸上競技場に到着して、感じた観客数の少なさ。寂しさ。
「これがJ2なのか?!こうも違うのか!!?」
ショックに打ちひしがれた気持ちの中で観戦した試合だったけど、
だけど徐々に何かが違うことを感じた。
「サンガ・・・まとまっているやんか」
試合終了後、選手がサポーター席に挨拶に来た時、
初めて感じたサンガの選手同士の一体感。まとまり。チームとしての団結力。
過去のサンガに見られなかったチームのまとまりをこの時感じた。
「サンガ・・・いままでのサンガではない・・・。何かが違う!もしかすれば。。。

サンガは復帰できるかもしれない。チームとしてものすごくまとまっている!」
その試合を観てから気持ちの中で決して復帰が出来ないという気持ちは湧かなかった。
不思議だけど、自然と諦めることはなかった。

その思い出をふと頭に思い出しながら、サンガがJ1復帰を決めた喜びを噛締めた。
「J1奪還」悲願は達成された。そして、J2優勝も手に入れた。

2002年3月2日(土)新たなるサンガはこの日から始まる。
新たなる出発と、J2降格の屈辱に打ち勝った京都パープルサンガのJ1クラブとしての
再スタートを再び見届けることになる。サンガが歩むべき道はどうなるのかは分からない。
だけど、1年苦しんだJ2リーグでの経験は決して忘れてはいけない。
再び、不死鳥は大いなる翼を広げる。果てしなき道、果てしなきその大空に。
忘れるな、その大いなる飛翔を。

(END)

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