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サンガに託す。−再起を賭けた戦いー(前篇)

 あの歓声と、観衆の中に足を踏み入れ、胸を張って歩いた国立競技場。
天皇杯決勝戦鹿島との逆転勝利の奇跡を起こしたサンガ。
その舞台にFIFAフェアプレーフラッグを持つことを許された私にとってそれはまさしく
忘れることのない至福の出来事だった。
一度で良いから生きている間に国立競技場のピッチに立ってみたいなと夢を見ていた頃の
自分にはまさかその時が来るとは思いもよらなかった。

「一度で良いから国立に行ってみたい。その時サンガがその舞台にいたら
なおさら嬉しいし感動もんだよー!天皇杯でも良いからそれが叶えばもう何も言うことはないわ」

と思いを馳せていた当時、サンガは正直降格争いの常連だった。
天皇杯でも満足に進んだのはベスト8までだった。
しかし、彼らは生まれ変わった。初めての降格に屈辱を覚え、J2での激闘を共に歩んで
声援を送り続けていた果たした希望はJ1での最高成績を収め勢い盛んにも天皇杯でもそれは
消えうせることなく見事に成し遂げた決勝進出にそれはまさしくありえない出来事に当時の
自分には写った。

「信じられないこれは夢か?幻を見ているのか?あのサンガがまさか。。。
そこまで行き着くとは。。。」

迷うことなく国立への応援を決めた自分にはサンガの決勝進出の喜びに気が行って、
その時以前に思っていた自分の夢も忘れていた。胸を躍らせ東京へと行く自分。
そしてフェアプレーフラッグまでも持つことが許されたその行為にまさに今振り返れば
絶頂だったかもしれない。
そして目に映るサンガの優勝カップを高々と掲げる姿。
「俺たちは勝ったぞーー!」
強豪鹿島アントラーズに勝ったサンガに歓喜と感動を覚え勝利することの喜びを感じずには
いられなかったが、
不思議だがこれで天狗にならなければいいのだが。。。
と浮かれながらも不安に駆られている自分がそこにいたことも事実だった。
「これでサンガが変な方向に進まなければ良いけど。。。」

 03年J1リーグは始まった。。。始動の遅れと、補強の少なさ、そして日本人主体で闘うという
サンガの03年度の姿に一抹の不安を抱えながら天皇杯優勝という肩書きが周りの不安と
喧騒をかき消していた。
そしてシーズンは始まった。西京極へと足を運ぶ自分には確かに今年も上位へ進出し、
またまたサンガ旋風を吹き荒らすと思う自分はいた。完全に忘れていた。。。
それはもう過去のことなんだと。
しかし、ピッチで闘っているサンガは別物だった。あれほど走り続け若さを武器に前面に
押し出し果敢なまでに攻め込む姿を見ることは決してなかった。
何かが違う。。。選手からは勢いを感じない。どこか迷い、攻めても奪えない得点。
それどころか一気に崩壊してしまうDFライン。中盤ではボールをまわすことも出来ない。
奪えても速攻に移れず、ちぐはぐにも後ろに下げたり手数をかけて攻撃に移る。
その動きが相手に読まれタイトルホルダーの肩書きは対戦相手には格好の餌食となった。
何度勝てる内容のゲームをしただろう・・・しかし、勝てる内容だった・・・だけで
止まってしまい相手に得点を奪われると一気にチームは失速した。

負けて挨拶に来る選手からは危機感はなく、何かが違うという気持ちだけが全体から
伝わってきていただけだった。何かを変えよう。それしかない。と思いながらも出来ない苛立ち。
怪我にも泣かされている選手をフォローできない選手層の薄さ。
ここにきて補強の怠りは明らかに明白だった。
02年ならまだ修正は可能だった。開幕4連敗から息を吹き返し8連勝を成し遂げた02年なら
昇格組みという気持ちとチャレンジャー精神で乗り切れた部分は多かった。
そして何よりもそこにいた朴智星の存在も大きかったのは言うまでもなかった。
だれもが彼を追い越せ、ポジションを奪えというチーム内でのライバル意識も多かっただろう。
だけど不思議と彼らには感じられなかった。
以前にも思っていたことがあった。00年の頃。いつかは取り返せるはずという
気持ちが強いが為にズルズルと引き込まれていったはじめての降格のときと印象がダブっていた。
失点の多さ、主力の怪我。それは降格の条件にはまっていたから。
そしてやはりエースの不在に泣かされていたときと同じだった。
でもたしかに00年はカズはいた。怪我もなく。ピッチにいた。
しかし、他の主力は怪我に泣かされた。そして補強もチグハグに選手たちの気持ちがバラバラに映り、
もう少し得点が奪えればという感想と同じようにその気持ちは同じだった。
03年のサンガにはそれが重なって見えていた。
J2リーグで感じた連携間の強さ。そして02年のJ1での闘いにも選手たちは一つにまとまっていた。
それが感じられないサンガの姿はまさしく自分が始めて降格した時と同じだった。
「これはもしかすれば、やばいかもしれない。。。
いや。。。同じかもしれない。。。ほんとうにあぶない」
降格が決まるガンバ大阪戦まで結局そのダブりは消える事は一度もなかった。。。

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