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いつか再び翼を広げて  −茜色に沈んだ夕焼けの中で(5)−

 望月、平野の加入により、川崎F戦で劇的な逆転を演じ、続く広島戦でも
平野の移籍初ゴールで初の連勝を飾るなど、カズの好調、朴もコンスタントな働きぶりを
見せてチームは生まれ変ってきていた。

ガンバ戦、柏戦では惜しくも破れはしたものの、市原との総合勝ち点差は7点、4点と変動していたが、
少なくとも食らいついていた。
あと一歩。市原を追い抜く事ができる。それは応援しているファン、サポータはわかっていた。


リーグ戦では降格の瀬戸際にいる中、ナビスコカップではベスト4に進出するなど、
カップ戦では強さを発揮していた。リーグ戦では1度も勝てない磐田を破る健闘を見せていた。
惜しくも、同じ降格の瀬戸際にいるフロンターレに準決勝では決勝進出決定戦で敗れたものの、
中断されていたリーグ戦への良い弾みになるだろうと思った。
中断されている中で試合をできる事は強みになるし、試合勘をつけることが今は何よりも重要になる。
一方で韓国への海外遠征をする事も初めてのことだった。だけど、それは自分にとっても心強くあった。
「中断されている中での試合は今までの修正も可能になる。練習だけでは得られないものが
試合を通じて手に入れることができる」

1ヶ月間中断されていたJ1リーグ。残りは5試合。
サンガは残り5試合を死に物狂いで勝たなければいけない。
5試合の中では鹿島、磐田と対戦しなければいけない。強豪との対戦が待ち受けている。
負けられない相手である。いや、いくら強豪であっても自分達の気持ちの中に諦めることは
許されない。

「俺達はもう、負けられない。」その熱い想いはスタジアムにいる者全員が想っていた事だった。
瀬戸際にいる中でサポーターも一丸となった。「紫魂」の言葉はその時からだった。
そのロゴの入ったTシャツも作られ、選手、スタッフ、応援している者たちの思いはその言葉に凝縮された。
J1残留への思いを込めた紫魂。サンガのチームカラーである紫に魂を込めて、
まさに魂、プライドをぶつけた死闘を一丸となって臨んで行かなければならない。
西京極へ足を運ぶのも力が入る。
サンガにとって残りの5試合は是が非でも落とせない。

ラスト5試合の初戦、名古屋戦は1-0で勝利した。
望月、平野の古巣との1戦は注目された試合であり、彼らにとってはなんとしても負けられない
思いがあっただろう。
終了後の望月のガッツポーズが全てを物語っていた。彼らもまた、サンガを残留させる為に必死だった。
 だが、続く鹿島との戦いは前半2点をリードされ苦しい状況に立たされていた。
残り5試合までの成績は4勝5敗1引き分け。たしかにファーストステージの勝ち数と比べれば大いなる進歩。
完全に負け癖は無かった。ただ、失点はどうしても気になっていたが、エンゲルスが指揮をとってからは
サンガは上昇気流に乗りかけていた。生まれ変っていたと言っていい。
名古屋との戦いに勝利したことを考えて、鹿島にも同じように難しい試合だろうと想っていたが
それでも今は負けることは許されない状態だから、意地でも勝ち点3を手に入れると信じていた。
それに鹿島戦では西京極でのゲーム。以前鹿島を破った事もあるだけに西京極での相性は良いと
信じていた。
だが、後半に朴に初ゴールで1-2と1点差に詰め寄ったものの、後半に再度1点を入れられ万事休す。
1-3と敗れてしまった。
この日はビスマルク、名良橋が欠場しているだけあって大いなる期待感を持っていたのだが、
地力の差がでてしまった。
「次の磐田戦が山場かも知れませんね。。。。」そういわれた事に思わず嘘!っと思った。
「いや。。。まだ分からないよ・・・」語る言葉にも力が入らない。。。
試合後の選手の姿もどこか暗い。。。うつむく姿にただスタンドからは「絶対残留!」と
コールが沸き起こっていた。
負けても一丸となっているスタジアムに自分も諦めないぞ!と念じている自分がそこにいた。
自然と意識は完全に諦めないという気持ちに変っていた。
以前なら「うーん。。。これはやばいな。。落ちるな。。。完全に」と思っていた
意識に変化に自分でも驚きを隠せないでいた。
市原との勝ち点差は7だった。もう一歩で追いつけると思っていた勝ち点差は結果的に縮まらなかった。
意地でも残留するんだっていう選手の姿、サポーターの熱き想いに触発されていたからかも知れない。
そして、自分自身の私生活に諦めてはいけないという出来事があったからかもしれない。
その事は後日触れることにしようと思う。
追いかけられている市原が敗れていた試合があってもサンガもまた敗れていた事が
御付き合いしなくても良いのにという思いがあった。
考えてみればそうだった。。。サンガは自分達が勝てていたら絶対に追いつけるという事を
演じているにも関わらず負けて、結果的に追いつけなかったという事が何度もあった。
96年でもこの試合に勝てば最下位から脱出出来るのに。。という事があった。
自分達の首を締めて、立場を危うくさせている事が何度もあったのだから。。。
最後の最後まで。。。と深い溜息をついていた。。。
そして、残り5試合の一つである、磐田戦を迎えようとしていた。
私は、テレビ放送が夜中にあること朝の新聞で知り、タイムリーではやらへんなー。。と思いながら、
家族で買い物に出かけた。
試合が気になるだろうな。。。。と思いながら。
いつものように携帯で経過をしればいいやと思いながらいつものようにアウェーでの試合を
ごく普通に捉えていた。それは本当になにも考えていなかった。
数時間後その結果を知り、それが運命だったと言う事に気づくまで本当にただ無心で
「勝てよ!!」と祈っていたのだから。
ナビスコで破ったことに対して、勝てない相手ではないと思っていたのだから。
しかし、リーグ戦では一度も勝てない相手であることもまた完全に忘れていた。
「勝てよ!勝てよ!!」と祈りながら買物に出かけた。
見せてやれ!「紫魂」!と純粋に思っていたのだから。。。
「不死鳥は決して死なない。」96年にサンガの監督を務めていたオスカーの言葉が思い出された。
連敗地獄を味わったあの頃が急に思い出された。
もうあの頃ではない。。。サンガもまたJ1というトップリーグで戦ったという
プライドがそこにあったのだから。
幾つもの紆余曲折を経てサンガは変って来たし、また、強くもなったのだから。
ただ、トップリーグにいる年数はもう5年も経過しているのだから、ある程度
その中で何を学んだのかという事も確かに不満としてはあったけど。

(6)へと続く。

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